「目嚢(めぶくろ)」昔の怖い話はのぺっとしてて怖いです
加門七海さんの小説を読むのはこれが2冊目。じっとり怖くもあり嫌な感じもありましたー。読書感想文です。
なんとなくゴヤのサトゥルなんたらの絵を思い浮かべてしまうお話でした。こえー!
「祝山」の続編です
加門七海さんの小説「祝山」の主人公・鹿角南が再び怖い目に遭うお話です。
前作は友だちが勝手に心霊スポット探索して悪いものくっつけて帰ってきて、それに巻き込まれてしまったのでめっちゃイヤイヤだった南ですが、今回は「いとこの旦那の実家にあった古い文献を読み解く」という、南自身も歴史好きということで割とノリノリで取り組むうちに怖いことに巻き込まれていきます。
涙袋じゃなく
「目嚢」とは、江戸時代に怖い話ばかりを聞いて集めた「耳嚢」をもじって、「見えたモノを記す」という意味で、作中出てくる古い日記を書いた人が自身の日記をそう名付けているものです。
ヒアルロン酸入れてぷっくりさせるアレかなと思ってましたが、それは涙袋ですね(*ω*)
古い文体で書かれた日記は淡々としてて、一見すると日常のことを書いているようにも思えるのですが、主人公・南は途中で「本当に”見える”人が書いてるっぽい…!」と気づきます。
日記ののっぺりした文章が薄ら怖いのです。
なんかやっぱり「怖い」というのは内容じゃなく伝え方なのかもしれないと思えてきます。
すっごい怖いことは起きないんだけど
虫が!とか、幻聴が!とか、主人公に起きる怖い現象といえばその程度だったりするんですが、加門七海さんの表現力がぞぞーっとさせてくれます。
「紙で指がピッと切れる」「その傷がなかなか治らない」なんて日常よくあるけどテンション下がるわーなんてことも、主人公の身に起こります。今こうやって書いてても普通なんですが、小説ではなんか嫌な感じなんです。上手なんですよね、きっとこれって。
家相ってやっぱりあるのかしら
日当たりが悪くてジメジメしてるとか、道のどんつきの家は良くないとか、若い時は「帰って寝るだけだし別に何でもいいわい」と思ったりもしましたが、家相の悪い家に当たってしまうのって恐怖だなーと大人になって思います。
この小説とは関係ない話なんですが、大島てるさん(事故物件サイト運営者さん)が言ってたことを思い出しました。
「自殺のあった物件が家相が悪いとかは分からないが、殺人や強盗など犯罪被害に遭った家なんかはやっぱり、人通りが少ない路地だったり街灯が少なくて暗かったりっていう狙われやすい環境もあったりするので、そういう意味でも事故物件の情報は大事だと思う」
的な事だったと思います。うーん確かに。
家相のせいで、嫌な事件怖い事件が重なって、さらに家相の悪さが熟成されていく…みたいなことってありそうだなと。
そのへんは小野不由美さんの「残穢」も似てるなあ。
日本のイエ文化が深く関わっているのかなー。
モンゴルで遊牧して暮らしてる人たちは、どんな幽霊が見えるんだろう。
(残穢の映画版の感想も書いております↓)
今夜のホラー考まとめ
雨が降る夜に一人で実家で読んだら泣いてたかも、な小説でした
梅雨時期におすすめかも!