「東京二十三区女」ホラー版ブラタモリ(っぽい)小説
長江俊和氏の三作目となる著作でホラーミステリー。2016年9月出版。読みました。
東京都内に存在する、暗い伝説が残るスポットを巡る女記者と、取材に同行する民俗学の男性講師のお話。
以前読んだ氏の新書『検索禁止』にも、この小説が紹介されていました。氏は長編小説って書いてますが、短編の連作です。
東京の各区にまつわる都市伝説や事件を元ネタにしたホラーで、本作は板橋と渋谷、港区、江東区、品川区の五つの区で構成されています。
最終的には二十三区全部書く!って『検索禁止』に書いてました。そうなったら面白いなあ。
今回は謎解きほぼなし
私はずっと関西暮らしで東京にちょこちょこしか行ってないので、土地の感じがうっすらとしか分からないんですが、それでも説明が丁寧なのでなんとなく理解しながら読めました。
『出版禁止』の時のような謎解き要素もほぼないです。
最初の章「板橋区」で、縁切り神社が出てくるんですが、そこに登場人物が奉納した絵馬に暗号文が書かれているくらい。
読み始めた当初、今回も謎解き満載かなー?と腕をブンブン回して、暗号文を書き写して…てやってましたが、そういう意味では肩透かしでした(´-`;)
(ちなみにこの暗号すら最初全然分からなくて、横から見てた旦那に瞬殺で解かれてしまう屈辱)
(アナグラムではない、ということだけはお伝えしておきます)
説明役として主人公の女子にずっとついてくる「先輩」の正体も途中からなんかバレてきちゃいますし。
ちなみに縁切り神社は京都にもあるんですが、行って絵馬を読んでなかなかに黒い気持ちになった記憶があります(*ω*)
ブラタモリのホラーバージョン、世にも奇妙な物語風
「渋谷区」では、都市化の為に渋谷川をコンクリートで蓋して暗渠(アンキョ)にした…というのがお話のベースにあったり、なんかブラタモリ風でお勉強にもなりました。
そしてしっかり毎回ちょっとゾッとさせてくれます。
幽霊的な怖さやクリーチャー的な怖さ、精神的にくるやつ、不衛生なやつ…となかなかにバリエ豊富。この辺りはさすがだなあと思いました。
東京だからいいんだろうなあ
いま、場所をテーマにホラーを書くには、東京っていい感じに歴史が深いようで浅いようで…な土地で、人間の出入りが激しくて、首都だから移り変わりも激しくて…っていうのがちょうどいい場所なんだろうなあと思いました。
江東区の夢の島の話は特に思いました。莫大なゴミの処分をする場所だから、ヒトが混じってても気づかれない…なんて本当にありそうで。
関西だと、例えば京都の歴史が深すぎてホラーにしても別のものになりそうですし。
「大阪市二十四区の女」とかだと、急に上田正樹感出ちゃいますし。浪花節。
「西成区の女」とか。…んー。(読んでみたいけど)
今夜のホラー考まとめ
知的好奇心と怖いもの見たさを満たしてくれる、一粒で二度美味しい小説でした!
(謎解きしたいぜ!な人には物足りないかも)