今夜もぼちぼちホラー考

今夜もぼちぼちホラー考

ホラージャンルの映画やドラマ、小説や怪談話など、「怖い」を自分なりに考えるブログです。ネタバレせずに書く自信ありません、ごめんなさい。落書きも劣悪でごめんなさい。

「出版禁止」繰り返し精読した小説はこれが初めて。自分なりの考察です

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こんなメモとって、、我ながらキモい笑

 

この本は「放送禁止」シリーズの長江俊和さんが手がけた小説。

「放送禁止」けっこう好きなのでこの小説も早く読みたかったんですが、1,800円するからなあ…と発売からこんなに間があいてしまった笑

でも1,800円分はしっかり楽しませてもらえました!

 (文庫が3月1日に出てる、今気づきました。。。くやしー!!本ブログ記事の引用ノンブルは単行本のものです)

 

普段なら雑に読んでストーリーだけ追うんですが、今回はメモをとりとり精読してみました。

 

あらすじ

社会の暗部を暴き続ける、カリスマ・ドキュメンタリー作家の「心中事件」。相手は、有名女優の妻ではなく、不倫中の女だった。そして、女だけが生き残る。本当は、誰かに殺されたのではないか?「心中」の一部始終を記録したビデオが存在する。不穏な噂があったが、女は一切の取材に応じなかった。7年が経った。ひとりのルポライターが彼女のインタビューに成功し、記事を書き上げる。月刊誌での掲載予告。タイトルは「カミュの刺客」。しかし、そのルポは封印された―。いったい、なぜ?伝説のカルト番組「放送禁止」創造者が書いた小説。

引用:Amazon CAPTCHA

 小説は、

長江俊和さんの序文

若橋呉成のルポ

長江さんの解説

という構成になっています。なので、一応の謎解きは解説部分でされます。

しかし細かいところは放ったまま終わっていくので読み手はそこの解明を託されるかっこうになります。

 

大まかな謎解き

小説のキモは「視覚の死角」と若橋が表記した部分が変換ミスであったこと。

「刺客の刺客」もしくは「刺客の資格」だった

(私は後者だと思うなあ)

 

政治結社の高橋にこれを言われたことで、自分が負うべき使命、つまり新藤七緒を殺害しなければならないことを自覚するんですよね。

「カミュの刺客」は、自分が誰に雇われたのか、何のためにその対象者を殺害するのか知らされないこともある

p.97

 ともあります。

 

でも、七緒のことを本気で愛してしまったので、殺してしまったのを境に心身耗弱になった。

(で、カニバリズムに走るってちょっとよく分かりませんが)

 若橋が七緒を殺した後の記述で、以下のようなちょっと長江さん的おふざけ要素も。

取材対象者と個人的な関係を持った場合、(中略)

あまり深く接しすぎると、目の前で起こっている事象の全体像が見えなくなり、大きく客観性を欠いてしまう恐れがあるのだ。

七緒と親密な関係を持った今も、その点は意識して注意しているつもりなのだが、時折不安になることもある。のめり込みすぎて、大事なことが見えなくなっているのかもしれない、と。

p.198

 なんつって!七緒の全体像見てみなよっ!首から下無いよっ!笑

 

で、ルポ内の自分の名前を若橋呉成、心中事件の生き残りの女を新藤七緒とします。

これがアナグラムになってて、

わかはしくれなり→我は刺客なり

しんどうななお→胴なし女

となって、事件の真相のヒントを暗示します(胴なし女には気づかなかった(´-`;))

 

あとは、七緒が若橋を呼ぶときの表記を「□□さん」とするのは「刺客刺客さん」の暗示…?

この辺の遊びが何とも長江さんらしい子どもっぽさ(*ω*)

でも七緒の本名を表記する時は××になってるので、□□はやっぱりわざとなんだろうな…

 

ゾワっときたのはタテ読みすると…の部分。

長江俊和さんおなじみのギミックなんですが、内容が内容なので「おぉ」となりました。

長江さん解説読むまで、全然気づかなかった笑

ちゃんとルポを読むと、途中から七緒が話してなかったり、襖や引き戸ばかりの家だったはずなのに途中から「ドアを開けて声をかける」のような記述があり、そういえばドアって冷蔵庫しかないやん…!とゾワゾワきました。

 

ところで、「しんじゅう」という読みって「臣従」とも書けて、主君に従うことって意味なので、「臣従」=カミュの刺客として任務を全うすること、とも取れるんじゃないか…?

取材を再開するにあたり取材のテーマを熊切事件の解明から心中の心情解明になったと書いているところから、「臣従の心情」=七緒を殺す自分の心情を記述するってことなんかな?と。

うーん、これはこじつけです!

 

ちゃんと分かってないこと

以下は未だに分からないこととそれに対する推察です。

 

  • 若橋に事件取材の依頼をした知人とは誰か

ルポの記録が始まる二年前に依頼を受けたようなのですが、二年前は若橋が大病から復帰した頃。

ただの知人、と割り切ってしまえばいいんですが、二年前の病気…ってどこかにつなげたい(*ω*)

ルポ内で出てくる「二年前」は他にもう一つあって、それが七緒の母の死亡時期です。

肺がんで亡くなったとあるので、おそらく病院で亡くなったものと思われます。ここに若橋も入院していたとしたら…

七緒と永津佐和子は遠縁にあたり、七緒の父が経営する工場の窮地を佐和子が救っていることから、七緒の母の病院にも見舞いに足を運んでる可能性あるなあと…。

 

だからって、永津佐和子が取材を依頼したとなると後々つなげるのがしんどくなるので可能性としては低い…のかな。

しかし、熊切が神湯の子どもだったということは熊切も佐和子も神湯シンパの一員だった可能性もあるなと思いまして。

七緒もインタビュー内で

二人は夫婦でありながら、どこか同士のような関係もありました

と二人を見ています。

 

まー考えすぎかなぁ(´-`;)

 

  • 七緒が二年越しで取材に応じたのはなぜ?

のちに見つかる七緒の手紙のなかで

私が深い恩義を感じているある方にまで、追及の手が及ぶかもひれないと危惧し、申し出を受けることにした

とあるんですが、これは七緒が自分で勝手に危惧して取材に応じたんでしょうか。

それとも、若橋がメールのなかで「いま永津さんにも話聞こうとしてます」的なことを書いたのでしょうか?

→p.14

まだ事件の取材を継続していることや、関係者に話を聞いたり、取材依頼を色々としているということもメールに記した。

 

書いてました(x_x;) すげー、冒頭ですでに伏線が。。

 

  • 政治結社にそんなすぐアポ取れるの?

途中、若橋は神湯のシンパが組織する政治結社へ行き取材をしますが、政治結社へどうやってコンタクトを取れたのか、場所をどうやって知ったのかの記述がありません。

やっぱり最初に若橋に事件を調べるよう言ってきた「知人」に教わったんでしょうか?

まあこの「知人」が神湯シンパであることは間違いないでしょうからねー。

 

  • p.210「二つもの大きな間違い」って何?

一つは「熊切心中事件が、神湯が仕組んだ謀殺ではないかと疑っていたこと」だとは思いますが、もう一つって何なんでしょうか…?

七緒と一夜を共にしたこと…?でいいのかしら。。

読解力が足りなくてココに引っかかりまくって混乱しました。

 

  • 永津佐和子の死の真相は?

若橋も自殺した半年後、佐和子は事故死します。

飲酒運転の事故死となってますが、殺された感じプンプンしますよね☆

何らかの形で若橋のルポが神湯武闘派の手に渡って「熊切の死は結局永津佐和子のせいやん!」となって粛清されたんでしょう。

 

今夜のホラー考まとめ

パズル的ミステリーにゴアなエッセンスで、よく出来た「長江的小説」でした!

「放送禁止」好きで未読の方は読んでほしいなあ。

数時間語り合えそうです。

 あと、昨年秋にも新刊が出たみたいなので読んでみたいです。