今夜もぼちぼちホラー考

今夜もぼちぼちホラー考

ホラージャンルの映画やドラマ、小説や怪談話など、「怖い」を自分なりに考えるブログです。ネタバレせずに書く自信ありません、ごめんなさい。落書きも劣悪でごめんなさい。

「モンスター」「ヘルタースケルター」整形女の滑稽さ不快さ

f:id:katahabahiroko:20161127213334j:plain

どちらも整形つながりということで、百田尚樹「モンスター」と岡崎京子「ヘルタースケルター」を読みました。

整形して美しくなることって、どうして非難されるんだろう、なぜ不快なんだろうって深めに考えるきっかけになりました。

どっちも映画化してるけど、そちらは未見です(*ω*)

 

「モンスター」あらすじ

田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた 未帆は、整形手術に目覚め、莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、狂おしいまでの情念だった——。

引用元:Amazon CAPTCHA

 

男から見たブスの人生、女の整形

整形の方法について、詳細に取材されているんだろうなという、説明の細かさです。

(それにしては、術後の痛みや不具合はあまり描かれない気がするけども)

 

しかし、整形に至るブスの人生の悲壮感が、もっと悲壮でもいいなって感じました。序盤から割としつこめに、いかに和子がブスか、周りから虐げられてるかの描写があるんですが、そんなにひどくない。

高校時代、私の同級生には陰で男の子たちから「陰毛」ってアダ名つけられてる子もいましたし。現実の方がよっぽど悲惨です(x_x;)

 

単行本版と文庫版でラストは全く違います(ネタバレあり)

ラストが違うというか、文庫版にはエピローグが収録されています。

2ページの短いエピローグなのですが、これがあるのとないのとで読後感が全く異なります。

単行本では、和子は死の間際、愛する英介に自分の正体を明かします。「それでも好き?」と問う和子に「ああ、ああ」と答える英介。満足そうに死ぬ和子。

整形して綺麗になった和子は本当の愛を手に入れて「最愛の人の手の中で死ぬ」という望みまで叶えてしまう。なんだそりゃー!一応ハッピーエンドなんやん!とずっこけました。

しかし文庫版のエピローグでは、和子は結局英介に救急車も呼んでもらえず放置され、英介は元の家庭に戻っていったというような描かれ方をします。これで、きちんと「バカな女の悲喜劇」という一つのエンタメとしてまとまったような気がします。

整形して綺麗になって、あまたの男を手玉にとるテクニックも身につけた。しかし本当に好きな男の前では冷静さを失って簡単な嘘も見抜けなくなる。

ボロボロに汚れてスレきっても、女は愛を前にピュアになるとも言えるんでしょうか。

読むなら文庫版の方がおすすめです。

(って、人工の美しさを手に入れた女は不幸になって欲しいって、歪んでいるのか…)

 

「ヘルタースケルター」あらすじ

「もとのままのもんは骨と目ん玉と髪と耳とアソコぐらいなもんでね あとは全部つくりもんなのさ」。大掛かりな全身の整形手術とメンテナンスにより、完璧な美しさを持つモデルの「りりこ」。女優や歌手としても活躍し人気の絶頂を迎えるが、体は次々に異常を訴え始める。それにつれてりりこの心の闇も濃く、深くなり、彼女の人生はやがて手もつけられなくなるほどに壊れてゆく。

 引用元:Amazon CAPTCHA

 (1996年当時はあそこの整形はそんなメジャーじゃなかったのかな。「モンスター」の和子はあそこもイジります)(トイレが上手にできなくなるって聞いたことあるけど…)

 

恥ずかしながら岡崎京子さんの作品は初めて読みました。

強烈でした!

女にとってはリアルなファンタジー

りりこの過去は詳細には描かれないですが、全身整形をして芸能界で生きると決めたりりこの決意やヤケクソ感のようなものが、相当嫌な過去だったんだろうなあと想起させます。

美しくなって、自分の魅力で周りを振り回せると分かったら、人間これくらいしそうな気がします。

クスリのように、前の刺激ではどんどん足りなくなっていって行動が過激になっていく(実際おクスリの副作用でもあったようですが)

「モンスター」の和子とはスケールが違います。

 

りりこはみんなから忘れられるということを恐怖しますが、芸能界というのは元より消費され忘れられていく世界。

消費されることに存在意義があるのだけれど、そうするとどんどん摩耗してしまう。本人も終わりが見えているのですが、足を洗い結婚する算段も失敗に終わります。

美しいだけの女が男に遊ばれて捨てられる、というのは和子も共通しています。

しかし和子とりりこでは最終目標が異なります。

和子は「自分が愛する男に愛されたい」

りりこは「自分の居場所を守りたい」。

 

和子はやっぱり男性の作家さんが描いた女って気もします。

それとも、2010年という時代の感覚なんだろうか…。

りりこの方が、なんだか自分にとってはリアルでした。

自分がめちゃくちゃ綺麗になったら、周りをかしずかせたいと思いそうだし、世の中全てに復讐してやるって気持ちになりそう。

 

なんで整形って嫌悪感を抱くのか

昔やってた「ビューティーコロシアム」という番組が好きで放送されると必ず見てました。

「ナメクジ女」とか今でも覚えています。

本当に生きるのが辛いくらい自分の容姿に問題があると思うのなら、整形をしたって全然構わないと思います。

 

でも、芸能人とか、チヤホヤされている人が本当は整形してると知ると「えー、なんだー、整形なのか」とがっかりしたり嫌悪したり。

りりこも整形だということがバレて、週刊誌に「ウソつき」とバッシングされます。(現代では整形くらいじゃ記事にならないだろうけど)

バッシングを受ける理由って、人を騙してチヤホヤを得たりお金を得たりしてるからなんだろうなあと思ったんですが。

じゃあ化粧もダメなの?と言ったら化粧はそんな嫌悪感抱かない…

 

なぜ整形が生理的にヤな気持ちになるのかと考えたら、整形って「それやったら身も蓋もないよね」という考えを持ってるからなのかなと思いました。

ドーピングでメダルとっちゃうような。

みんなそれせずに日々自分を磨いているのに…って。

あれ、結局ヒガミなのかな(´-`;)?

 

今夜のホラー考まとめ

欲望は女の方が深くて怖いと思う