今夜もぼちぼちホラー考

今夜もぼちぼちホラー考

ホラージャンルの映画やドラマ、小説や怪談話など、「怖い」を自分なりに考えるブログです。ネタバレせずに書く自信ありません、ごめんなさい。落書きも劣悪でごめんなさい。

「恐怖への招待」楳図かずおが語る恐怖の変遷。それから漫画人生。勉強になります先生!

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今年9月で御歳80歳になられた楳図かずお先生。
1988年刊行のものが1996年文庫化され、そっちを読みました。こちらには「14歳」を書き終えた先生のあとがきも掲載されています。
 

忙しすぎ!こなせる先生がすごすぎる

「おろち」「イアラ」を同時に書いていたって知ってビックリしました。
週刊連載1本と毎週読み切りって、尋常じゃないですね。
そんな生活が続いて肝臓の働きが悪くて顔が真っ黄っ黄になったとか。。。日本の宝を失う危機でしたね…
 

恐怖から時間、空間、意識や存在まで。深すぎる

全編、インタビューによって構成されているのでちょっと話があちこちに飛んだりすることもありますが、読み応えは充分。
「恐怖」についての先生の深い思索を垣間見ることができます。
メディアに出ている時の楳図先生の少年のような奔放さから、「天才型の方なのかな」と思っていましたが、いやもちろんクリエイターとしてとんでもない天才である事は間違いないんですが、深く深く恐怖についてや、時間や空間や存在といったような哲学的な分野にも思考を広げて創作活動をされていたんだと知りました。
 

「怖い」も時代で変わるんだ

恐怖の種類が時代によっても変遷していくという先生の分析と、それを捉えて作品に反映する表現力も見事。
60年代前半の日本は近代以前の価値観が残っていて、家の中や人間の身体に闇みたいなものがまだあって、生理的な恐怖の世界だったと。
それが心理的な、外からは見えにくい恐怖に変わっていった。
また、恐怖の発生に原因や理由がある因果応報的なストーリーから、突然わけのわからない恐ろしいことに襲われるストーリーになってきた。
これはいわば仏教的な感覚だったものから欧米の感覚が入ってきたと先生は分析しています。
 
なるほど〜。
日本は鎖国していたから外から侵略されたりといったことは比較的少なかった。大陸の一国であれば理由なく侵略されて蹂躙されるようなことも起こりうる。
その歴史的な背景もあるのかしら…とか
高度成長期以降、欧米の感覚が日本人の生活にも浸透してきて日本人の神仏への信仰がより薄れていったことも関係するのかしら…と
なんかまさかこんなことまで考えさせられる本だと思っていませんでした笑
 
そして、このインタビューの後には楳図先生の長編大作「14歳」が生まれるわけです。
とにかく圧倒的なスケールと熱量で襲いかかる「14歳」の楳図ワールドに至る、先生の思考の一端が読める一冊です。
 

今夜のホラー考まとめ

楳図先生、いつまでもお元気で!