今夜もぼちぼちホラー考

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ホラージャンルの映画やドラマ、小説や怪談話など、「怖い」を自分なりに考えるブログです。ネタバレせずに書く自信ありません、ごめんなさい。落書きも劣悪でごめんなさい。

「虚言癖のレイラちゃん」私のお気に入り怪談

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簡単に「最恐!」とかいうのはどうかと思うのですが、たびたび思い出してはブルッてしまう怪談がいくつかあります。

その一つが、岩井志麻子女史の「虚言癖のレイラちゃん」というお話。
 
文章にしてもあまり怖くないかも知れませんが、これはあらましを書いちゃおう。
幽霊の出てこない「リアル怖い人話」です。
 

虚言癖のレイラちゃん(ねむれない怪談オールスターズ2より)

 
志麻子さんの知り合いに一般人のレイラちゃん(仮)という女性がいる。
このレイラちゃん、息をするように嘘をつく、いわゆる虚言癖の持ち主。
たとえば「私のおじいさんはドイツ人なんだ〜」というような、そんな嘘ついてどうするの?というような話ばかりしている。
しかも、自分で吐いた嘘をどんどん忘れていってしまうものだから、以前は北海道出身と言っていても「私の故郷は沖縄で…」とキャラ設定が常にめちゃくちゃになっている。
 
ある時、レイラちゃんが連続強姦殺人鬼を退治した話をしてきた。
彼女が上京したての頃、女の一人暮らしばかりを狙う強姦殺人事件が起こっていたのだが、ある日殺人鬼はレイラちゃんの部屋に押し入った。
しかし彼女はゴルフクラブでガンガン殴って殺人鬼を返り討ちにし、警察を呼んだ。あの男はいま刑務所に入っているの。その話の中で、レイラちゃんは志麻子さんにこんな質問をした。
「ねえねえ志麻子さん、殺意を持った人間の顔って見たことある?人が人を殺そうとしている時の顔って見たことある?」
「ないよそんなの!」と志麻子さんが返すと、
「すごいんだよ。
目の周りがブワッと赤く隈どりしたようになって、歌舞伎役者がまるで見得を切るようになるんだよ」
 
その話が妙に印象に残っていた志麻子さんは、知り合いの雑誌編集者に話をしてみたところ、面白いから記事にしましょう!ということになった。
編集者が裏をとったのだけれど、事件の犯人は未だ捕まっておらず、解決していなかった。このレイラちゃんの話もやはり虚言だったのだ。
 
また別の日、レイラちゃんは志麻子さんにこんな話をした。
昔、シェアリングしていた女友達には嫉妬深い彼氏がいて、部屋に来ては浮気しただの何だのと痴話喧嘩ばかりしていた。
「ねえ志麻子さん、殺意を持った人間の顔って見たことある?人が人を殺そうとしている顔って見たことある?
私はあるよ。あるとき友達が彼氏を殺そうとしたときに見たの。
目の周りがブワッと赤く隈どりしたようになって、まるで歌舞伎役者が見得を切ったときのようになるんだよ」
 
レイラちゃんの話はもう一つある。
かつて彼女には風俗店の店長をしている彼氏がいた。
その彼はヤクザの親分に死体の処理をするよう言いつけられた。
一人で仕事をするのは怖かったので、相棒をつれて、布団袋に入った死体を富士の樹海に埋めに行った。
しかし、埋めようとしたとき布団袋の中身が動き出した。
生きていたのだ!彼氏は怖くなってしまって、放って帰ろうと言ったけれど相棒が「何を言ってるんだ、失敗したらそれこそ俺たちがヤクザに殺される」と大きな石を持って来て動く布団袋の頭の位置めがけてガンガン振り下ろしたのだった。
その話を彼氏がレイラちゃんにした時、こう言ったのだそうだ。
「おいレイラ、人が人を殺そうとしている時の顔って見たことあるか?すごいんだぞ。
目の周りが赤く隈どりしたようになって、まるで歌舞伎役者が見得を切るようになるんだよ」
 
シチュエーションも登場人物も異なるこの三つの話だけれど、殺意のある人間の顔を見たことがあるか、すごいんだぞ、目の周りが赤くなって歌舞伎役者が見得を切るようになるんだ、という部分だけは共通しているしそこだけは妙にリアル。
 
志麻子さんは次のような推察で話を締めくくる。
 
本当はレイラちゃんは人を殺したんじゃないか。
その時に鏡に映った自分の顔をみたんじゃないか。
嘘ばかりの彼女のなかでその顔だけが真実で、その罪をなかったことにしたくて嘘を吐き続けているんじゃないか
 

書いてみるとそこそこ長かった…(´-`;)

 
心が壊れてしまった系の人の話というのはブルブルきます。
レイラちゃんが人を殺してしまっていて、そのせいで虚言癖になっているのか
もともと虚言癖だけれど、殺人というのはそこまで人の心の奥の奥に突き刺さるものなのか
どちらにしても人間の恐ろしい部分が垣間見える話だと思います。
 
「殺意のある人間の顔」の描写もリアルで、レイラちゃんの顔も知らないのにハッキリ頭の中にビジュアルが浮かびます。
これは怪談の重要な要素でしたね!_φ(・_・ )
 
レイラちゃんはあなたの隣にもいるかもしれません…みたいな意味でも恐ろしいです。
すぐバレる嘘を吐いたり意味のない「盛り」をする人、たまに出会いますよね。
そんな人は心の奥の何かを隠そうとしているのかも…。
 
この話、動画サイトに出たり消されたりしてますが。
DVDも出てます。(こんな話DVDでしか出せないよなぁ笑)
文でご興味持たれた方はぜひ志麻子女史が話す映像をご覧ください
話し方自体は少しつたないんですが、それがリアルで怖いんです。
 

ここからは全然余談

 
余談なんですが、私の父は釣りが趣味でして。
釣ってきた魚を家で捌いて食べることがたびたびありました。
まず魚の眉間を叩いてシメるんですが(眉毛ないけど笑)
魚の口が最大限まで開いて、目を剥いて抵抗するんですよ(瞼ないけど笑)。
それを手で押さえて、ガンッ!ガンッ!と出刃庖丁の根っこの部分とか、ちっちゃなハンマーで叩くんです。
料理は母がするんですが、シメるのだけは怖いから、といつも父がやっていました。
たまにウロコが飛ぶので、少し顔をしかめながら、でも淡々と真顔で。
 
幼心に何か深く刺さっている光景です。
だからレイラちゃんの話も怖く感じるのかなぁ。
 

今夜のホラー考まとめ

 
志麻子先生は存在自体がホラー製造機だったりする
(いろんな意味で)