「マタンゴ」円谷の本気がほとばしるキノコホラー
1963年公開、89分。監督は本編が本多猪四郎氏、特技監督は円谷英二氏です。
本多猪四郎氏は「ゴジラ」「モスラ」の大監督。
こんな最強監督のコンビが撮ったキノコホラー。
私は初めて見たのが10年ほど前で、その時はこの映画を勧めてくれた人が「日本が作ったアホアホキノコホラー」みたいに紹介してくれたのでそんな気分で見ていたんですが。
もう一度見てみたら結構本気で面白かったです。
あらすじ
ボンボンのグループがいい気になってクルージングしていたら嵐に見舞われて漂流!
流れ着いた無人島は鳥も寄り付かない不毛の島だった。
島の反対側に流れ着いていた難破船を調べるとすごいカビが生えていて…
核実験の影響で生まれた怪キノコ「マタンゴ」?!
食べたら最後、気持ちよ~くなってキノコ人間になっちゃうよ!
…みたいなお話です。
新技術をしっかり取り入れて!
船上のシーンは合成なんですが、今見てもなかなか上手くできていて、なるほど当時新しかったオプチカルプリンターをこの映画の為に数千万で購入したそうで。
島の奥で、雨の湿気を吸ってムクムク育つキノコたち。
これも、当時開発されたての発泡ウレタンが使われてるそうです。
何かの逆回しなのかしら?とか、空気で膨らましているの?とか思って見ていましたが、こんなところにも新技術。
おかげで不思議と目に焼きつくシーンになってます。
セット、美術も豪華だー
船が無人島に行き着き、島の反対側で難破船を見つけるんですが、そのカビだらけになっている船内のセットもすごく作り込まれています。
見てるだけで鼻がムズムズしてくる(*ω*)
カビ、胞子ってどこにでも入り込んで気がついたらモケモケしてたり黒ずんだり、本当に怖い。
そこで見つけるでっかいエリンギのようなキノコ「マタンゴ」!
ネーミングセンスも秀逸です。
ドラクエで名前を知ってる人も多いはず。
魂の解放か、人間性の放棄か
マタンゴを口にすると、神経をやられ、胞子が体に回ってキノコ人間になってついには自分を失ってしまいます。
しかし不毛の島ではやせた芋か、幸運でもウミガメの卵くらいしか手に入らない。
「このキノコ食べてると、いつかキノコになるのよ」
「あいつら半分キノコだ!」
と、台詞だけ見るとアホアホ映画ともとれるんですが、テーマは深い。
極限状態に追い込まれた人間たちの、食欲と性欲(と理性のたたかい)、武装・非武装による権力のゆらぎ。
ゾンビ映画とも通じる、ホラーとかスリラー映画の醍醐味もしっかり入れ込んであります。
ゾンビ映画と違うのは「キノコ食べること(アッチ側いっちゃうこと)がそんな悪いことなのか?」と思えること。
自我っていう捉われから解放されて幸福のうちに自然と一体になる…って、あれ?これもしかして現世に出現したニルヴァーナなんちゃう?とも思えてくるのです。
しめじって1970年代に出回ったんですね
映画の中にはしめじをモデルにしたようなキノコマンが出てきますが、しめじが人工栽培できるようになり家庭に出回るようになったのは1970年代だそうです(wikipediaより)。
野菜が高騰しても値段が変わらない、家庭の強い味方しめじちゃん。そんなに歴史浅いの?!ってビックリしました。
てかそこまで言及してる執筆者にもビックリしました。
ちなみに、キノコの味と香りってとても複雑で、脳の味覚を認識するエリアのシナプスを作るのに手間がかかるので、キノコを美味いと思うのには時間がかかるそうです。
子どもがキノコ嫌いな子がいるのも仕方ない、らしい。
宗教人類学者の植島啓司先生が仰ってました。
(ので、本当か分からない笑)
今夜のホラー考まとめ
マタンゴ食べる?食べない?で性格診断できそう笑
私は割とすぐ食べてしまうタイプの人間だと思う。