「百鬼夜話」稲川淳二の味わいを”お笑いジャンル”に見立てて考える。
今夏リリースされ7月にレンタルが開始になったDVDを見た感想をつらつらと。
セブイレで発売されたお手軽DVD?のようですね。6編の怪談が入っています。
最近の「稲川先生、怖くない説」について思うこと
稲川先生の怪談、私も大好きです。
根強いファンが多数いる一方
最近稲川淳二の怪談怖くなくね?や、いやそもそもあんまり怖くないやんという声を見かけます。
でもそれはもしかしたら、youtubeやなんかでいくつか怪談を見て判断しているんじゃないかなと思ったりします。
しかしながらそれはフレンチのフルコースの前菜を一皿だけ食べて「味薄い、おなか膨れない」って言っているようなもの。
フルコースっていうのは、味が薄めの料理からスタートして、メインディッシュで最高潮を迎えてデザートでシメますよね。
このDVDもチャプターで言うと「開演」という名でちょこっと稲川さんが話して、みなさんのお口を「怪談口」にします。
で、短めの心温まるような怪談からスタートして、ビジュアル的にインパクトのある話、自分が体験した話などを続けます。
ここであえて、一番ぞくっとした話(5つめの話)のあらましを書いてみる
部活で肋骨を折った男子高校生が入院をした。
ある日病院の売店でカズオという男子高生に出会った。
彼も腎臓を悪くして入院しているという。
手術をすれば治るのだが、自分に合う腎臓がなかなか見つからないそうだ。
カズオは「お前の腎臓、俺にくれよ」と冗談めかして言う。
最初は冗談だったのだが、日を増すごとにカズオの顔色は悪くなり出会うたび「お前の腎臓をくれ」と言ってくる。
本気で自分の腎臓を欲しがっているような語調だ。適合するかどうかも分からないのに。
ある夜、男子高生が寝ている病室にまでカズオが現れて「腎臓をくれ、俺には時間が無いんだ」と言ってくる。
それから毎夜カズオは現れるようになった。
病室にまでカズオが現れるようになって5日、男子高生は看護師に相談した。
すると看護師は「カズオ君は5日前、亡くなった。葬儀場がつまっていて葬儀が遅れていて、おそらく明日中に荼毘に付されるはずだ」と言う。
じゃああの夜来ていたカズオはこの世のものではなかったんだ…
今夜、もし何かあればナースコールをしなさいということになった。
果たしてその夜、カズオは病室に現れた。たまらずナースコールを押すが、カズオは「腎臓をくれ…!」と言いながら首を絞めてくる。
もうだめだ、と思ったその時、看護師がかけつけて「カズオ君もうやめなさい!あなたはもう死んでるの!」と叫んだ。
ふっと首にかかっていた手がはずれるとカズオは消えた。
「くやしい…もう間に合わない」
恨めしそうな声が闇から聞こえた。
ね、ベタでしょう
細部ちょっと間違っている部分あるかもしれませんが、おおむねこんな感じのお話です。
(肋骨折れたくらいでそんな長期間入院する?って言うのは野暮なのでやめてあげてください…)
内容は、コンビニに置いてあるペーパーバックの恐怖漫画なんです。
でも、稲川先生の表情・声色・間、それら表現力の豊かさをもってこの怪談がかなり怖く感じるのです。
やっとお笑いの話
噺家さんが古典落語をやっているのを見て
「その話聞いたことあるよ!」なんて妙なこと言う人はいません。
古典やスタンダードやベタをやるんだけど、演じる人間に力があるから面白いんだと思います。
または、談志さんが滑舌悪くて何話してるか分からない。でもじーっと聞いていると段々分かってきて、面白いなぁ〜って感じる。
稲川淳二の怪談にも通じるところがある気がします。
そして、聞くこちら側の年齢も重なってきて、長尺のネタ(怪談)もゆっくり聞けるようになってきた。
中田カウス・ボタンさんが面白いと感じたのも20代後半でした。
いとしこいし師匠も牧歌的でいいよなあ、とか。
それに、ゲラゲラ笑う!腹筋崩壊!がお笑いの全てではない。
たとえばダウンタウン松本氏の「トカゲのオッサン」や「おっさん劇場」のような「哀しオモロい」であるとか。
お笑いで例えるの、あまり上手くいきませんでしたね(すみません)
特典映像には、8分あまりの稲川先生インタビューが入っています。
インタビュアーの監督?さんが
「稲川さんはますます円熟味を増している」と語っていて、まさにそうだと私も感じてます。
怪談を一つのエンターテインメントにしてきたパイオニアであるところの稲川淳二大先生。
ぜひ70分通してじっくり味わってほしいDVDです。
あと、特典映像での笑顔、本当に癒やされる…!
こんな顔で笑える大人、日本に何人いるでしょう。
次はライブDVD見たいなあ。
2012年に一度見に行ったきり、子どもができてイベントには行けておらず。。。
今夜のホラー考まとめ
なんか多分、稲川さんは我々が思ってるより数歩先の怪談エンタメを考えておられるような気がするぞ!